ホーム > 対談 重光産業(味千ラーメン)

成功のカギは、コンセプトを理解してくれるパートナーがいるかどうかにかかっている。

アジアにおいて、今「日式」「日本食」は新たな食のスタイルとして随分受け入れられているように感じます。

重光

我々が中華料理を「脂っこい」と感じるのと同じイメージで、日本食は基本的に「ヘルシー」と見られています。 さらに、盛りつけの細やかさや彩り、小皿で提供していくやり方はこれからも注目されていくんじゃないでしょうか。 あとは安全・安心。品質の良さが受け入れられています。信頼感が他の国のものとは格段に違います。

佐藤

ある程度高くても、日本ブランドとして受け入れられている部分はありますね。また、上海や香港など、向こうの 人たちの生活スタイルも変わってきています。昔は家族みんなで大皿で食べていたのが、働く人も増えて1人や2人で食 べる機会も増えてきて…。小皿で提供するような日本の食スタイルも多くなっています。

重光

まあ、それも少し飽和状態になっているようにも感じますね。日本食なら何でもいいというわけではなくて、その時 その時、日本でも流行っているものでないと受け入れられません。昔は大人気だったけど…っていうものを持って行っ ても、それは広がらないんじゃないでしょうか。

老舗の、昔からある商材・食材の海外進出に関してはどうですか。

重光

老舗…。そのままであれば難しいかなあ。 古いから必ずしも良い、というわけではありませんし。 例えば、熊本の郷土料理に『辛子レンコン(注:レンコンの穴に辛子味噌をつめて揚げたもの。辛味が強い)』があります が、それを向こうの人に持って行っても食べない。舌が合わないから。 その土地で長年親しまれているから、それが海外でも通用するということではありません。じゃあどうすればいいか、と いえば、同じ発想で食べてもらえる方法を考える。

佐藤

『レンコンに詰める』という発想でそれを海外用に展開・アレンジしていかないと。技術や海外のスタイルを受けてア レンジする力が必要です。

重光

そういう意味で、こだわりすぎるといけないですよね。固定概念を多少破った発想じゃないと。 例えば、私が経営する「味千ラーメン」の話でいけば、日本風のラーメンって、チャーシュー、ネギ、ゆで卵…というイメージ を日本人は持っているけれど、向こうの人からするとどうでもいいわけです、知らないものだから。基本となる味はそのま ま、ベースは一緒ですけど、その他はその国その国で合わせていっていいと思います。対応することが必要ですね。

佐藤

そうですね、地域に合わせる開発力と柔軟性。

アジアの市場についてはどういった印象ですか。

重光

お金を使う、稼ぐということに対して日本人じゃ想像もつかないくらいのレベルですね。

佐藤

貯め込まないですよね、使うことに貪欲なんです。

重光

極端に言えば「とにかく入ってみよう、食べてみてまずかったら残して金払って帰ればいい」って考えです。お金持って いるから。「なんかいい」って感じたら衝動的に飛びつくイメージ。

佐藤

出店する側から考えても、準備に準備を重ねていくのもいいんですが、アジアではそれでは間に合わない、冒険できないと感じますね。

重光

あれだけ人口がいれば躊躇してたって意味がないんですよ。立ち止まったらお金持ちになるチャンスを失う。一か八かで 進んで成功すればお金持ち、という考え。たくましいですよ、彼ら。

佐藤

その中で海外進出する日本人が勝つには、冒険する気持ちは絶対に必要ですね。

日本企業がアジアに入り込む隙はどこにあるんでしょうか。

重光

結論から言えば、うまいパートナーがいないと日本企業は無理ですね。経験もあり、そして何より自分たちの理念や目標を 共有できる相手を見つけない継続できないでしょう。 ただ金儲けをしたいというパートナーであれば、1店舗出したら次、次ってどんどん出店しようとします。ただ、日本企業とし ては、まず店舗を広げるために人を育てないといけないですし、飲食店なら味の統一も必要です。そこを理解してくれない相 手であれば失敗します。

佐藤

その通りで、コンセプトを理解してくれるパートナーであることがポイントですね。特に飲食店は、食べ物という生き物を 扱います。食品輸出をする人がいて、受け取る人がいて、料理を作る人がいて、提供する人がいて。管理や対応が大事。その 企業理念やブランド意識がないパートナーと組むと、ばーっと展開してもう中身はどうでもいいってことになります。そこが 怖いところです、海外は。

重光

そういうやり方は、一瞬は広がるけどなくなる確率も高くなります。味や中身の質が落ちてしまって、支持されなくなる。

企業の分野や考え方に、海外進出のカギはあると思われますか。

重光

今はどの企業、どのジャンルでも可能性はあります。市場が活発に動いているし、いいものを見つけようと動いているから、 何でもいけると思います。 企業の姿勢としては、判断が速くできる会社ですね。先ほども言ったとおり、アジアのスピードは驚くほどの速さ。トップ自ら 動けるような、フットワークが軽い会社でなくては。

佐藤

現地の責任者が判断できなくて「帰って社長に聞いてみます」ってなって、1ヵ月2ヵ月経ってしまってはスピードに乗れま せんよね。

重光

中小企業になると、それができるかがひとつの課題になるかもしれませんね。オーナーが日本にいなくて、国内のお店がダ メになってもいけないですし。今ある日本の店舗をどう維持するかをきちんと考えたうえで海外進出しないといけないでしょう ね。

(敬称略)

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